「今になっていきなり800万払えって来たんです。無理ですよ。先生、助けてください・・・・」
「落ち着いてください。しっかりお聞きしますから。さあ、どうぞお座りください。」
粂は相談者を落ち着かせ、話を始めた。
実は相続絡みの案件は、揉めて切羽詰まってからの悲痛な叫びが多い。
この日、粂智仁事務所にやってきた山口明弘さん(仮名)もそんな一人。気弱そうな50代の男性だった。
この方は母親の成年後見問題で粂の著書を読み、過去に一度相談されたことがある人物。
「実は死んだ弟に、3年経ってから多額の借金があったことがわかったんです。」
相続放棄は3か月以内というルールがあるため、こずるい債権者ならそれ以降に名乗り出てくるケースも多いもの。
しかし今回は3年も経ってから突然降って湧いてきたものだ。
相談者は男・男・女の三人兄弟の長男。
3年前に亡くなった次男は自分とも下の妹とも付き合いも殆どなかった。
亡くなった弟の妻は「葬式代もない」と言っていたために、葬式代は相談者と妹が折半で出した。
お金はないもの、と思っていたので相続など考えになく、無論手続きもしていない。
すべては終わったことだと思っていたら、3年後に突然銀行から相続人になる兄と妹に「800万円払え」と連絡が来たと言うのだ。
「まだ銀行には連絡していませんね?」 粂が尋ねる。
「はい。怖くて連絡していません。先に先生に連絡しました。一体どうしたら・・・・」
「なぜ3年経った今になって来たんでしょう?」
「弟の嫁に聞いたら実は弟には大きな借金があって、彼女がそのまま引き継いで無理しながらも払っていたと。で、いよいよ払えなくなったところで銀行から我々に来たんじゃないかと言うんですよ。」
今回のケースは貰うものもない、借金があることも知らない。しかも相続人であることすら知らなかったという三重苦である。
3か月を過ぎれば今更相続放棄もできない。知っていようがいまいが関係ない。
無知でした、では済まされないのだ。
「銀行から届いた書類を見せてください。」 粂が依頼者から書面を受け取る。
「ちょ、ちょっと待ってください!銀行からの書類、これ届いてからもう一か月も経ってるじゃないですか!?」
「・・・すみません・・・現実逃避でしばらく見て見ぬふりで考えないようにしていて・・・・
もうそろそろヤバいんじゃないかと今日来たわけで・・・・」
相続放棄には『借金があることに気付いてから3か月』という側面もあるため、この線で押さないといけないと考えていたのだが、リミットは既に二か月を切っていたのだ。
『う~ん・・・間に合うのか・・・』
粂がそう考えるのも無理はない。実際に相続に関する調査をし、資料を作成するのにはかなりの時間と手間を有するためだ。
「よし、じゃあ私のネットワークを使って解決に向けて大至急進めます。いいですか。」
「先生、助けてください!宜しくお願いします!」
「はい。家裁へ申立てが必要ですから・・・まずは弁護士との連携ですね。一緒に会いに行きましょう。」
専門家の仕事の区分は決まっている。行政書士というのは名前の通り行政へ提出す る書類を作成することが主たる仕事だ。粂は言う。
「代書屋なんて言われた時代もありましたが、漫画やドラマの『カバチタレ』のおかげで 我々行政書士の知名度も上がりました。」
厳密にいえば漫画「カバチタレ」に出てくる行政書士がやっている仕事は違法になる こともある。だから内容によっては弁護士、税理士、司法書士などとタッグを組んで解 決に当たらないといけないケースが多い。
粂の場合、全国で行政書士や士業の人向けの研修講師を長年務めているために全国各地にこういったネットワークを持つ稀有な存在だ。
粂は道中、頭の中で方針を組み立てながら相談者と弁護士事務所へ行き、提携する弁護士に事情を伝えた。 弁護士が依頼者に確認する。
「では闘うということでいいですね?わかりました。じゃあ下準備は粂さん、2か月しかないから大変だと思うけどやってね(笑)。」
「やっぱりそう来ますか(苦笑)。まあ任せてください。さあ山口さん、一緒に勝ちに行きますよ!」
「宜しくお願いします!」
粂と気心知れた弁護士とのタッグで、相談者も頼もしく思ったことだろう。
では最初から直接弁護士の所へ行けばいいのではと思うかもしれない。
ところが弁護士は調査まで依頼するとなれば当然、調査費用に足代までかかり、あなたの想像を遥かに超えた請求が来るだろう。
弁護士だって商売。そこが儲けどころになる。
「戸籍調べは面倒で厄介な上に相当手間がかかるものです。」
弁護士も戸籍調査は得意ではなく、むしろ面倒で嫌がる仕事。ノウハウもあまりない。
行政書士は『職務上請求書』を使って戸籍を調べるが「やったことがない」という行政書士も多い。粂はこの分野は百戦錬磨のため、逆に弁護士からの調査依頼もあるほどだ。
「相続に強い行政書士」たる所以である。
粂の地元・茅ヶ崎はサザンオールスターズの地元として有名な街。
茅ヶ崎の頭の「C」を形どったモニュメントがあり、その先にはサザンの曲でも有名な烏帽子岩が見える。
粂は依頼者の本音を聞きたいときには依頼者と近くの海に行くことがある。
経験上、案件を進める中でギリギリになってから「実は・・・」ということも多いもの。
部屋の中よりも、自然の中の方がなぜか人はオープンになり、普段話せないようなことも饒舌に話してくれるようになるためだ。
粂は依頼者とモニュメントのそばに腰掛け、話し始めた。
「今回の件について、隠し事なくいろいろ聞かせてください。」
「わかりました。」
「まず弟さんはどんな方でしたか?人となりを知りたいです。」
「私より2つ下の弟は小さい頃から一人で変身ロボットで遊んでいるような子供でしてね。今までケンカもしない代わりに私に対して素直にハイ、なんて言うタイプでもない。弟は高校を出てから家を出て横浜におりまして、結婚式もしなかったので本当に家族の割に縁が薄いんです。」
「ほう。ではあなたとはあまり接点がない感じですね。妹さんともですか?」
「妹とも同じじゃないかなぁ。私と妹は割と近くに住んでいることもあってたまに連絡は取り合うんですが、弟とは全くで。だから癌で死んだって聞いても病気だったことすら知らなかったくらいなんです。お恥ずかしいのですが・・・」
粂は家族構成も一つ一つ確認していく。
「お聞きしている限りでは弟さんの妻・そして長男であるあなた、そして長女である妹さんの3名が相続人と思われますが、手続の際に必要ですからご存じなかったご兄弟がいないことを確認する必要があるのでお父様の生まれたところまで調査します。」
「そんなことまで必要なんですか・・・」
「相続は結構手間がかかる案件なんです。それぞれの方の思惑、まあすべてお金ですがそれが絡むのでね(笑)」
「・・・わかりました。ご家族が誰も損せず、亡くなった弟さんにも無念を感じさせないようにしたいと考えています。」
「といいますと?」
「何とか家裁に相続放棄を認めさせる形でやりましょう。あなたも妹さんも1円も出さなくて済むように。そして安心して日常生活に戻れるようにしましょう。」
「大丈夫でしょうか、先生・・・」
「ゴールが決まれば、そう持っていくだけですから。大丈夫だと思います。」
「お願いします!この不安な毎日はもう嫌ですから。」
「・・・それじゃあもう少し突っ込んでお聞きしますね。」
粂と話していて感じるのが「直観力」と「洞察力」。これは彼の天性のものだと思う。
「私はこういう結論に行きたい。そうすればおそらくこういう流れになるはずです。」
彼がこういった話をする時は、すべてその通りになっていくからだ。
「私は先に結果、ゴールを見ているんですよね。幸せな結末を。そこから逆算で進めれば道はおのずとできます(笑)。」
粂は自分の仕事が書類作成だとしても、形だけの仕事をするつもりはないという。そうなったら誰がやっても同じだからつまらない、と。粂が続ける。
「だから私は依頼者の思いと願いをいろんな角度から受け止めて考え、書類に命を吹き込むイメージで作成します。だから私の作る書類は強いですよ(笑)。」
今回の粂の仕事は戸籍調べから始まり、『相続関係説明図』を作ること。
これをもとに弁護士が家裁に申し立てるという段取りだ。
経験値とキャリアからありとあらゆる事例に精通しているため、粂の作成する書類は天下一品の呼び声が高い。まとまりが良く的確で、相関関係も一目でわかるからだ。
弁護士も「粂さんが作る資料なら勝てる!」とお墨付きを出すほどである。
だが今回は家族間のつながりが薄く、調べるのに大いに手間取ることが考えられた。
粂は今回のこの戸籍調べは特に難儀しそうな嫌な予感がしていた。
しかしここで意外な人物がチャチャを入れてくる。
「あのオッサン、死んでから迷惑かけやがって!こんな理不尽な話があるかよ!気の 弱いオヤジじゃダメだ!俺が銀行に乗り込んで話つけてやる!」
ある日、粂の事務所に依頼者と彼の24歳の息子がやってきた。
なぜかいきり立つ彼は聞けば元暴走族で今は建設現場で働く血の気の多いタイプ。
父親から今回の件を聞いて激高し、一緒にやってきたのだった。
「待ってください、それをやったら最後です!もう逃げられなくなりますよ!」粂が諭す。
「え?マジかよ!なんでだよ!?」
「マジです。銀行に電話した時点で借金を認めたことになってしまうんです。だからお父さんにも最初に『銀行に電話してませんね?』と確認したんです。いいですか?軽率な行動は命取りです。絶対に止めてください。」
「おまえ、だから言っただろう!銀行より先にここへ連れてきてよかった・・・先生、本当にすみませんでした。先生にお任せします。」
父親も息子を伴ったことを悔いているようだ。
「感情で動いてもいい結果なんて得られません。銀行相手にゴネたって向こうはビクともしません。淡々とあなた方の資産を押さえにきます。」
「うっ・・・それは困るよ先生!」
「弁護士の先生と立てた作戦があるんです。プロに任せてください。」
「すいませんでした・・・宜しくお願いします。」息子も反省したようだ。
下手に進めれば二度とひっくり返せなくなる。覚えておいて欲しい。
話を持っていく順序は債権者からでなく、まず専門家に、が鉄則だ。
「ひゃ~、このパターンか!戸籍移動が6か所以上・・・こりゃ大変だぞ・・・・」
サラリーマンにはよくあるケースなのだが、転勤族だった依頼者の弟は移動する ごとに戸籍を移動させていたのだ。
なぜかと言えば、例えばパスポート申請等で戸籍を申請するときには本籍地の役所に申請せねばならないために、役所側も今後の手間を考え、好意から引越 し時に「戸籍も変えますか?」と勧めてくることがあるためである。
亡くなった弟も現住所の横浜の前は東京、福岡、富山、愛知、高知と移動が多 かったことがわかった。
戸籍調べは亡くなった人の生まれた所から相続人確定のために親の生まれた所まで調べないといけない。
そうなると戸籍謄本とか、遡るための除籍謄本とか改製原戸籍謄本まで必要になる。
これらを全部追いかけねばならない。タイムリミットがあるため、粂も焦る。
「粂さーん、大丈夫?間に合う?今日事務所?」
弁護士から調査の延長線で遠方にいる粂に、催促の電話が来た。
「調査で岐阜ですよ。苦戦してますが、間に合わせますから大丈夫ですよ!」
と息を切らせながら答える。地道な仕事である。
今回の件も核家族化の影響か、依頼者が親のルーツも知らなかった。
父親が祖父母の養子だったことも今回初めて知ったと言うオマケつきである。
複雑すぎて郵送のやり取りでは事足りず、父親の故郷の岐阜の役所まで訪ねてきたのだ。
戸籍がわからず住民票の所在地しかわからないという人も多い。
そこから辿っていくのだが、辿るにもプロのノウハウがいる。
取り寄せても戸籍の読解がこれまた難儀。『婚姻のため〇〇に行った』と出ていれば次はそこを追いかける。『離婚した』『分家した』『戸主が変わった』 とあればその先へ行く。
「こりゃエンドレスだなと心折れそうになりました(笑)。戸籍というのは一つ一つ辿っていくとその人の人生のドラマが一つずつ見えてくる。なるほどなーと感心することもあれば、 人生に無駄はないと気付かせて貰うことも多いんです。」
過去にこの書類作りを「自分でやる!」と強引に帰り、後日「やっぱり無理!」
と諦めて戻ってきた人もいた。プロに任せないと、万一抜けがあればえらいことになる。粂は言う。
「相続も今回はたまたま一つの銀行だけでしたが、今後芋づる式に他行や一般債権者が出てくることもある。そうなればアウトだから書類もこの一件だけでなく、他者が出てきても包括的に全て放棄できる『魔法の一枚』を作らないといけない(笑)。プロの腕の見せ所です。」
最終的に粂は今回の相続案件をすべて紐解き、弁護士に協力して相続放棄の書類を完成させた。
期限の二日前だった。
「義母には関わりたくないんです!」
「あの子にだけはビタ一文やりたくない!だってね、先生・・・」
「あいつは親の財産を使い込んできたんだよ!」
「姉は親と一緒に暮らしてきて十分利益を得てきたんです!」
「私は親の介護を一生懸命したんだから多く貰う権利がありますよね!?」
「兄さんは資産家なんだから、遺産なんて要らないでしょう!?」
「あいつこんな時だけノコノコ現れやがって!」
すべて今まで実際に粂が聞いてきたセリフだが、この一見生々しくて醜いと思えるセリフも、あなたが相続の当事者になれば聞くことになるかもしれないものばかりだ。
いや、あなたが言う側になるかもしれない。
“相続で揉めるのは金持ちだけ”。これは完全に間違った事実である。
実際に相続で揉める金額もドラマで見る何億などというのは稀で、殆どが5000万円以下なのが現実だ。
相続は次から次へと人が絡む。欲と権利と嫉妬と怒り。涙に怒号。
これほど様々な人間模様が蠢く世界もない。
仲の良い家族が皆、敵同士になることもある。正直、“これでは亡くなった方も浮かばれないだろうな・・・”と思ってしまう。
面白いことに、現れて現場を引っ掻き回したりひっくり返したりする敵や犯人が『必ず身内』だというのは、この世で相続絡みだけだ。
「亡くなった方の気持ちもしっかりと汲んだ、限りなく円満に近い相続のゴールへ情熱を込めて導く。『カネの切れ目が縁の切れ目だ』というタチの悪い親族ばかりならば『戦うべき時には戦うべき』とは思います。ただ、家族仲違いのまま終わる相続なんて私も含めて関わった者全員に嫌なものが残ります。そうはさせたくないのが本心なんです。」
そう言って粂は唇を結んだ。
「先生、相続放棄、認めて貰えました!!」
ある日、依頼者が弾んだ声で電話があった。
「よかったですね!弁護士からも連絡ありましたよ。本当にお疲れ様でした!」
「先生、本当にありがとうございました!弁護士さんも粂先生の資料のおかげだと。我々もこれでぐっすり眠れますよ。」
書類作成後は審判になって結果の書類が弁護士と依頼者に届く。
粂は結果を聞くだけだ。今回もまず負けないだろうという思いの下で頑張ったが、やはりこの報告は嬉しいものだ。
「相続に損得も勝ち負けもあってはダメだと思います。」
正直粂自身、相続というものの存在自体を肯定も否定もしていない。
ただ、相続が家族の仲を壊すものになることだけは避けなければならないという思いだけは強く持っている。
粂がこの仕事に全力を傾けるのも、粂自身の生い立ちにそのルーツがある。
粂智仁は地元・茅ヶ崎では名の知れた鮮魚店の長男として生まれた。6歳下に弟がいるが、歳が離れているせいもあり、今も疎遠だ。
魚屋は祖父母が本店を、夫婦仲の良い両親が支店を切り盛りする中、喘息持ちであったが海の近くの自然に恵まれた環境で虫取りに海水浴にと活発な幼少期を過ごした。
「三代目」――。これが幼い頃の粂の呼び名だった。
「おまえは三代目だからな。」ことあるごとに近くに住む親戚連中から言われたが、まるでピンとこない。
“俺の人生をなんで他人が決めるんだ?俺は好きな人生を歩んでやる!”そう思っていた。
放課後は小学校の目の前にあった祖父母の家に入り浸っていた。
子供時代のことで今もずっと心に残っているのは母親と父方の親戚との軋轢。
『お母さんが意地悪されて苦労している、嫌な思いをしていてかわいそう。親戚家族なんだから、みんな仲良くすればいいのに・・・』
子供ながらいつもそう思っていた。
親戚筋は粂自身に対してはいい人だったので、余計にそう感じたのである。
自分自身、ずっと気を遣いながら生活してきた家族とも、ぎこちなさは実は今も残っている。だから今の自分の仕事への思いの原点もここにある。
『家族は揉めることなく、仲良く暮らすことが理想です。家族仲を悪くする元は自分がなんとかしてあげないといけない、ずっとその思いがあるんです。』
これがずっと粂自身のモチベーションになっているのだ。
粂は自分が母親を何ともしてあげられなかった幼少期のトラウマと、どこかピースが欠けたままの自分の家族の絆を、仕事を通じて埋めていっているのかもしれない。
小さい頃から何でも直感で動く子供だった。これは今も変わらないのだが。
中学時代は演劇部。高校時代からは劇団四季にハマり、キャッツやオペラ座の怪人はすべてのシーンが頭に焼き付くほど観まくった。そのせいでミュージカル俳優に憧れ、中高はタレント事務所に入ってレッスンに励んだほど。
高校からはこれまた直感で、何をトチ狂ったか世田谷にある金持ちのご子息が通う私立の一貫校に入る。小田急線を使い片道1時間以上かけて通った。
周りには、親から先生達の給料以上の小遣いを貰うようなボンボンが複数いる環境。同級生には俳優の大鶴義丹がいた。両親が俳優の彼を羨ましく思ったこともある。
『この高校、馴染めないなぁ・・・・』
と思いながらも、将来のミュージカル俳優の夢に役立つかもと合唱部に籍を置いた。
意外と劇団の先生からの評価は高く、「声楽で音大受けたら?」と言われたほどだったが、必須のピアノが嫌でやりたくないために断った。
好きなこと以外、まるで頑張れない自分を知っていたからだ。
大学や社会人ではプロのオーケストラ付演奏会に参加するほどのめり込んだ合唱のおかげで、今でもカラオケは得意。十八番は徳永英明の「ラブ・イズ・オール」である。
『人に夢や希望を与えて、未来を変えてあげられる仕事をしたいな・・・』
漠然とそんなことを考えたが、何も浮かばないまま地元のデパートに就職するが・・・
華やかなデパートこそが流通・販売のトップだと思われていた時代。抱いていたイメージとは違い、食料品から物産・催事部門に配属され、その中でありとあらゆる仕事を任された。
催事では現場の図面引きからマネキンの配置、提携先に出向いての搬入搬出に販売。何をやっても良い結果を残していた為に便利屋のように重宝がられたことが自信にも繋がった。
『何をやっても結果を出せる、デキる俺って凄い!!』
充実感から年間 600 時間の残業も意に介さず、その当時はマジメにそう感じていたものだ。
2年目からは花形である外商部に移動。希望に胸を躍らせたが、イメージとは異なり、キツすぎるノルマと無給残業、月末が近づくと上司から浴びせられる罵声にも疲れ果て、粂自身将来を考え始める。
『俺はずっとこんな風なのかな・・・?よし、抜け出すために資格を取って独立しよう!』
『人に夢や希望を与えて、未来を変えてあげられる仕事をしたい!』
このことがまた頭に浮かび始め、さんざん考えた後に「これだ!」と感じたのが行政書士という仕事だった。
行政に提出する書類を作成する仕事だが、「身近な街の法律家」とも呼ばれ、その活動内容は多岐に渡る。
ある行政書士に「一枚の書類の完成までには必ずそこにドラマや人間模様があって、人を助けられる仕事だ」と言われたことがたまらなく魅力的に映った。
決めたら善は急げである。参考書を買い込み、一日の仕事を終えてから勉強開始。しかし残業や休日出勤の後での勉強は思った以上にハードだった。
試験では僅差での不合格が続くが、結局3度目の挑戦で合格。これで次のステップに進む条件が整った。
「辞めます!」と伝えた時の上司の顔は寝耳に水の顔だったが、このために努力してきたので振り切ってそのまま退社した。
しかし、なんとなくスタートしたものの、どうやって仕事を獲ればいいのかがわからない。知人達に紹介を頼んでみたりしたが、なんせ実績も自信もないから中途半端で反響もない。仕方なく、食うために就職活動をする。
「何ができるの?」
転職活動で面接に行った先で問われ、初めて現実を突き付けられた。
百貨店に4年半いても社内で評価されただけで、対外的な特別なキャリアは何も身に付いていなかったのだ。
営業もやっていない、事務のスキルもない。
となると、他社では「使いどころに困る人間」でしかない現実に愕然としたのだ。
『俺の必死の5年弱の時間は一体何だったんだ!?』
悩んでも仕方がない。就活を続け、粂は何とか、とある進学塾に職を得る。
ここでは中学受験のエキスパートの鬼講師として子供達を熱血指導する。ここでもなぜかこなせてしまう自分がいた。後に当時の生徒たちから言われたことがある。
「粂先生、俺らあれだけ鬼のように厳しく教えて貰ったおかげで中学以降、学校も塾もめっちゃ楽だったわ。あの時の塾の仲間で集まってもみんな今でもそう言うんだよね。あの頃はムカついたけどね(笑)。」
「やる人生とやらない人生、どっち選ぶの?あんたそろそろやれば?」
いつまでも腰を据えて始めようとしない孫に苛立った祖母がとうとう口を開いた。
その言葉にハッとした。塾講師として5年。この仕事が順調すぎただけに、どこかこの ままでもいいかと思っていた節は否めなかった。
「おばあちゃん、ごめん。自分を見失ってたわ。ありがとう。やるよ!」
平成11年、肚を括り事務所を構え、ついに『行政書士 粂智仁事務所』を開所。所長に納まる。
最初はドタバタだった。とにかく仕事が欲しくて広告を出したり、税理士や経営コンサルタント事務所等々、思いつくところに通い詰めた。
『人に夢や希望を与えて、未来を変えてあげられる仕事をしたい!』
という当初の目標にはまだまだ遠く、ようやく貰った案件を一つ一つこなしていくだけで精一杯の毎日が続いていた。
家族間、親子、兄弟、友人知人、会社関連。
ありとあらゆる相談事の中身に言えることは、人がトラブルを起こす相手は必ず「人」であるということだ。仲が良ければ揉め事は起こらない。
『人ってなんでこんなに揉めるんだろう・・・これも同時に解決してあげたい。』
粂は有名カウンセラーに師事し、人の問題やトラブルの源泉になる人間関係の紐解き方を学んできた。これは実際の相談者のもつれにもつれた人間関係を解きほぐし、解決の糸口を見つけ出すことに抜群の力を発揮している。
「他の行政書士には絶対に真似できない部分がここだと思っています。」
と粂は言う。法律的な解決策に加え、相談者を取り巻く人間関係を分析し、関係がこじれている理由を判断し、その後の対応策まで授けるというのは正に粂にしかできない芸当だろう。
なんと今では企業の採用や人事相談までこなすほどだ。
だから粂事務所に相談に来た人からその後に聞く話の特徴は、『家族関係が劇的に良くなった』というものが多い。
粂の仕事のベースになる思いは常に『家族は仲良く』である。
『相続のプロ』を名乗る粂の下には相続に関する相談が多いのは勿論だが、もう一つ得意なのは専門の著書を5冊も出版する『成年後見分野』。
家族の仲を裂くもの。それが相続問題。つまりお金だ。そしてもう一つが成年後見問題である。
親が認知症と診断されると様々な制限が掛けられることを知らない人は多い。例えば、これらはすべてできなくなるのだ。
●親の口座のお金が下ろせなくなる。
●契約ごとができなくなる。
●介護や入院費用のための不動産処分が裁判所の許可がないとできなくなる。
●役所でのいろいろな手続きができなくなる。
認知症になってから「親の財産状況がわからない!」とあたふたする人は多い。さらに最大の問題点は疎遠だった親の場合、何が財産で何が借金かもわからないというケース。
「相続以前にそもそも成年後見の申し立てしようとしても財産なんてわからないよっていう人も意外といるんです。」
それこそが粂が得意とするケース。独自の調べ方があるので、財産目録を粂が作成してくれるのだ。
「成年後見の申立てのときに一般の人が詰まるのは『親族関係図』と『財産目録』の作成でしょうね。」
成年後見の申立てのときには、四親等内の親族の同意を得なければならない。
推定相続人の同意を得ないと申立てできない。推定相続人とは現状のままで相続が開始した場合、直ちに相続人となるべき者をいう。
以前に粂に相談があったケースではご主人が認知症になり、奥さんも娘も既に亡くなっている。
残っていたのが甥と姪で、どちらもやたらと怪しかったので結局亡くなった奥さんの弟が成年後見を申し立てた。
その義弟がお金の面も含めてご主人の面倒をいろいろ見ていたためだ。
「結局、成年後見の申立てのときはやっぱりちゃんと親族関係図と財産目録を作れる 人じゃないとやれないと思うんですよね。」
高齢化がどんどん進む日本では、この問題はこれから困る人が増える。
だからこの成年後見の問題は必須なのだ。
「事が起こってからでは何ともならないんです。だから親が老いてきたなと感じたら、そのタイミングでまずは相談に来て欲しい。いざという場面になって困らないのは事前に準備をしていた人だけですから。」
だから成年後見の事前相談も本相談もプロである粂を頼って欲しいと切に思う。
「今後キーマンとなる行政書士達に、私のようなわかっている人間が経験も交えて教えていかないと、成年後見問題への対応は広がらないんです。」
同業の行政書士に対して成年後見についての勉強会を行うために、講師として全国39都道府県を回った。
このことでメリットもあった。
顔が全国に広がり、様々なプロフェッショナルの人脈ができたのだ。
だからもしあなたの所在地が大阪なら、大阪のプロをご紹介することができる。
「行政書士というのは意外と地元に根付いた活動のみの方が多いので、全国にこうやってネットワークを持つタイプは珍しいと思います。私を上手く使って欲しいです。」
近い将来、親が認知症になるケースは全体の半数に近くなるのではないかと考えられている。
粂の提携先も弁護士、税理士、司法書士、そして全国の同業の行政書士がいる。
だから「どこに相談したらいいかわからない」という問題もぜひ、粂事務所を覚えておいて欲しいのだ。
粂事務所には「他に行って!」はありえない。
「あなたの期待値を超える、あなたに合った120%の解決方法を見つけますからね。」
粂は必ずあなたが望むプロフェッショナルを見つけて、共にあなたのお役に立ってくれるだろう。粂のYouTubeチャンネルの副題も『同行二人』だ。
家族仲を守ることに加え、粂が掲げているもう一つのテーマは、『日本の未来へ、優しさと楽しさを繋ぐこと』である。
優しさと楽しさの源泉は『家族の笑顔』。
「だから仲良い家族は何が起ころうとそのままでいて欲しいし、仲が悪いならカウンセリングでその原因を突き止め、良くなるように持っていきたいと思うんです。」
粂が常々考えている思いがある。
「縁あってうちに来てくれた人を絶対に助ける!ということだけです。」
相談者の気持ちを汲むからどうしても対応は一歩踏み込んで丁寧になる。
「あいつは馬鹿正直だ」と同業者に笑われようと、死ぬときに後悔を残す仕事など死 んでもやりたくない。
「我ながら損な性格ですよ。」 三代目として自分に、そして父に、祖父に恥じない仕事をするだけだ。三代目の決意は固い。
『弁護士はハードルが高い』と考える人にも気楽に相談できるのが街の法律家である 行政書士だ。
『日本の未来へ、優しさと楽しさを繋ぐ』―――。
粂は街の法律家、そして悩み苦しむ人々の相談相手として人生を全うすると決めている。
行政書士は数多くいれど、知識と経験値に裏打ちされ、あなたの思いを汲み、時にはカウンセラーのように私的な相談にも乗り、幸せなゴールを描いてからあなたと共にしっかりと進んでいける行政書士となれば、それは全国でもただ一人だけだ。
苦しみの後には必ず喜び、楽しみがある。
粂のポリシーは、そんな行政書士という仕事の向こう側を相談者と共に見に行くこと。
これこそが行政書士・粂智仁の『仕事』だ。
行政書士と言うと、お堅いイメージを持たれたり、何を相談したらいいかわからないという方は多いものです。
人生には数々のお困りごとが起こります。ただ、その殆どが「どこで、誰に相談したらよいかわからない」というものです。
そんな時こそ、私を思い出してご連絡が欲しいのです。
今まで全国に数々のプロフェッショナルとの人脈を広げてきました。ですから、
「誰かに相談すれば必ずその先のプロに繋がる」という確信を持っています。
あなたや、将来あなたのお子さんに何かトラブルが起こった時も私がお役に立ちたいと考えます。
ご縁あった方とはその先も長いお付き合いをさせて頂きたいというのが私の思いですから。
相続、そして成年後見の日本有数のプロとして、そしてそれ以外のことに関しても
いつでもご相談ください。茅ヶ崎でお待ちしております。